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「遺留分に関する民法の特例」は、民法改正後も使い道はある。

相続関係図こんにちは。

兵庫県高砂市の行政書士、石井です。

近年、事業承継は、国家を挙げて取り組むべき課題として、税制面や手続き面での特例がどんどん出てきていますね。しかし、考えることが多く複雑でもあるため、経営者としてはなかなか取っつきにくいのも事実ではないでしょうか。

当事務所としては、経営者の皆さんのためにも、地域活性化のためにも、顧客従業員のためにも、全力で事業承継のお手伝いをして参ります!

さて事業承継に関して、経営承継円滑化法に規定されている遺留分に関する民法の特例ですが、民法改正によりどのような影響はあるのか、今後どのような使い道があるのかを検討してみました。

事業承継を考える参考にしていただければ幸いです!

目次

遺留分の性質に関する民法の改正

改正前民法1031条は遺留分減殺請求権を定めていましたが、その法的性質については遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずると解されていました。
このため、例えば株式や事業用財産のすべてを後継者に承継させる旨の遺言を作成していても、遺留分を主張されてしまえば、その株式や事業用財産は後継者と遺留分権利者との共有になるという不都合が生じていました。またこの共有関係を解消することが、新たな紛争の火種になっていました。

この点を解消すべく、改正後の民法は、遺留分侵害額相当の金銭債権が発生し、遺留分を侵害するとされた遺贈や贈与の効力は失効しないこととしました。
つまり、遺贈や贈与された株式等は完全に後継者のものになり、後継者は遺留分権利者に、遺留分侵害額相当の金銭を支払えば良いということになります。

遺留分に関する民法の特例とは?

遺言書

事業承継の場面における遺留分の性質に関する不都合を回避するため、民法の改正前から、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」が、遺留分に関する民法の特例を定めていました。

具体的には、除外合意と固定合意という二つの方法があります。

なお、除外合意や固定合意をする際、事業用財産等以外の財産に関する遺留分に関する取り決めや、相続人間の公平を図る措置の取り決めも併せてすることができます(付帯合意)。これにより、事業承継が絡む相続については、遺留分に煩わされることがなくなります。

除外合意とは

除外合意とは、推定相続人ら全員でする、相続により取得した株式等の価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこととする、書面による合意をいいます。

例えば生前贈与により取得する株式等の価額が1000万円であるとして、相続時の財産額が500万円だったとすると、
合意がない場合の遺留分算定の基礎額は1500万円。
合意がある場合の遺留分算定の基礎額は500万円。
となります。

固定合意とは

除外合意とは、推定相続人ら全員でする、相続により取得した株式等の価額を、当該合意の時における価額とする、書面による合意をいいます。

例えば旧代表者の生前に事業承継を行ったあと、後継者が頑張って会社を成長させ、株価が上がったとします。
いざ相続が発生し遺留分額を算定するとき、その算定の基礎額は、相続時の価額、つまり上がった株価が算定の基礎とされます。
この場合、他の相続人に遺留分の請求をされるリスクが大きくなりますし、承継後の後継者の頑張りが報われないことになります。

このような不都合を回避するため、遺留分算定の基礎となる価額を承継時の価額に指定しておくなどできるのが、固定合意です。

民法改正後の遺留分が民法の特例に与える影響。

注意

改正後の民法では、遺留分の請求は金銭債権化されました。
つまり、事業承継における株式等の承継財産の所有権は完全に後継者に移転しますので、改正前の民法下で問題であった、遺留分を請求されることによる株式等の共有問題は生じないことになりました。
そうすると、民法改正後は、特に遺留分に関する合意をしなくても、遺留分の額の調整を付帯合意によってしたのと同様の状態になると思われます。
しかし、遺留分に関する民法の特例がまったく意味のない規定になったかというとそうではなく、民法が規定するよりも遺留分の額を減額することができる点で、未だ活用のメリットがあります。
今後は、相続開始後の会社にどれだけ金銭を残すのかという視点で、特例の使い道がありそうです。

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