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遺留分ってなに?

相続関係図こんにちは。

兵庫県高砂市の行政書士、石井です。

当事務所に寄せられる相談でもっとも多いのは相続に関するものですが、最近では、相談する前にネット等で下調べをするという方が多いのではないでしょうか?

遺言に関しても、法務局での遺言保管制度が始まったからでしょうか、一度作成を検討してみようという方が増えてきているように感じます。

しかし、自分で遺言を作成するうえで、取り扱いが難しいのが「遺留分」かと思います。

今日は、この遺留分について解説したいと思います。

目次

遺留分とは?

遺留分とは、相続人(兄弟姉妹以外)のために法律上保障されている遺産の一定の取り分をいいます。
日本の相続制度では、被相続人(亡くなった人)の財産を、その子等に引き継がせることとしています。これには、残された家族等の生活を保護する意味合いがあります。
また、そのような制度があるということで、相続人に遺産取得の期待を持たせてもいます。
ですから、たとえ誰かに全財産を与える旨の遺言が作成されたとしても、各相続人に一定の取り分を認めようというのが、遺留分の趣旨です。
家族会議

遺留分権利者と総体的遺留分率

誰が遺留分を有するのか、またその割合はいくらかは、民法1042条に規定されています。

遺留分権利者

遺留分権利者(遺留分を有する者)は、「兄弟姉妹以外の相続人」(民1042Ⅰ)です。
具体的には、以下の相続人が権利者となります。

・配偶者
・子、孫、ひ孫など直系卑属
・親、祖父母など直系尊属

総体的遺留分

権利者全体に残されるべき遺産の割合(総体的遺留分)は、以下の通りです。

  ①直系尊属のみが相続人である場合 → 3分の1
  ②それ以外の場合 → 2分の1

これは、遺留分の総体であるため、個別的な遺留分割合を求めるには、上記割合に法定相続割合を乗じて計算します。
例えば、相続人が配偶者と子供2人である場合は、上記②の場合にあたるので、個別的な遺留分の割合は、

配偶者:2分の1(法定相続割合)×2分の1(総体的遺留分割合)=4分の1
各子供:4分の1(法定相続割合)×2分の1(総体的遺留分割合)=8分の1

遺留分の侵害となる行為

遺言書

具体的な遺留分の額を算定するための基礎財産は、以下の行為により相続財産から減少した額を加えて計算します。逆に言えば、以下の行為以外での贈与等は、遺留分を侵害しないことになります。

  ・遺贈
  ・死因贈与
  ・相続人以外に対する相続開始前1年以内の贈与
  ・遺留分を害すると知って行われた生前贈与
  ・相続人に対する相続開始前10年以内の特別受益となる贈与
  ・不相当な対価による有償行為

例えば、死亡前に子供や配偶者に財産を贈与するとした場合、それが死亡の10年以上前であれば、遺留分の問題は生じないことになります。
ただし、「遺留分を害すると知って行われた生前贈与」であれば、何年前でも加算されます。
ごく稀に、特定の法定相続人に相続させたくないとの理由で、生前贈与の相談に来られる方がおられます。
もし、贈与する人と贈与される人の双方一緒に相談に来られた場合、これに当たりうるので、ご注意ください。

遺留分侵害額を負担する順序

遺留分侵害額を、誰が、いくら負担するかは、以下のルールに従って決めます(民1047)。負担額は、遺贈または贈与の目的の価額を限度としますが、遺留分は控除して考えます。

  ①受遺者と受贈者がいる場合は受遺者が先に負担する。
  ②受遺者複数、または受贈者(同時)が複数の場合は、目的の価額の割合に応じる。
  ③受贈者(異時)が複数の場合は相続開始時に近い贈与の受贈者から負担する。

なお、上記①と③は遺言で自由に変更できません。例えば遺言で、受遺者よりも受贈者に先に請求せよ(①の変更)、古い贈与についての受贈者から先に請求せよ(③の変更)、などはできないということです。
もっとも、例えば②の場合、各受贈者への遺留分侵害額請求の順序は指定できます。

遺留分の計算方法

計算しています

各遺留分権者の具体的な遺留分の金額は、以下の式で求めます。複雑そうに見えますが、大雑把にいえば、「相続財産に個別的な遺留分割合を乗じたあとの額から、自分が得た財産の額を引く」です。

  個別的遺留分=(積極相続財産額+贈与額-相続債務額)〈1043Ⅰ〉
          ×(相対的遺留分率〈1042Ⅰ〉×遺留分権利者の法定相続分の割合〈1042Ⅱ〉)
          -当該遺留分権利者の特別受益額〈1046Ⅱ①〉
          -遺留分権利者が相続によって得た財産の額〈1046Ⅱ②〉
          +遺留分権利者が負担すべき相続債務の額〈1046Ⅱ③〉

遺留分の放棄について

遺留分は放棄することができますが、被相続人の生前と死後で手続きが異なります。

生前の放棄

被相続人の生前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です。
生前の放棄に家庭裁判所の許可を必要としたのは、当事者間の合意で自由に放棄できるとすると、推定相続人に不当に干渉して、遺留分を強引に放棄させる恐れがあるためです。

死後の放棄

被相続人が死亡した後に遺留分を放棄する場合は、遺留分権者が遺留分を侵害している相続人等に対して、遺留分を放棄する旨の意思表示をすれば足ります。

遺留分侵害額請求権の時効、除斥期間(民1048)

砂時計
遺留分侵害額請求権は、相続の開始(被相続人が死亡した事実)及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しない場合は、消滅します(時効)。
また、相続開始の時から10年を経過したときも、消滅します(除斥期間)。
つまり、相続の開始を知らなくても10年の間、知ってからは1年の間に請求する必要があるということです。
うっかり期間が経過していたなんてことはないようにしたいですね。

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