不要な土地を国に返せる?相続土地国庫帰属制度とは?
こんにちは!
高砂市の行政書士、石井です。
相続した土地について、「もう手放したい」と思ったことはありませんか?
土地が自分が言ったこともないような遠方にあるとか、管理する費用も時間もないとか、理由はそれぞれあるかと思いますが、「手放したい」ニーズは確かにあるなと、日々のご相談などから思います。
今までは、このような土地は放置され、いつしか「所有者不明土地」になってしまっていました。この所有者不明土地ですが、国内のものをすべて合わせると、なんと九州よりも広い面積になるそうです(平成29年時点)。そしてこのままでは、所有者不明土地はさらに増えていくことが見込まれていました。
そこで、相続等によって土地の所有権を取得した相続人が一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。この相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日からスタートしています。
以下、制度の概要をご説明します。買い手がつかないような土地でお困りのときは、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか?
目次
- ○ 手続きの流れ
- ・申請書の記載事項
- ・申請書に添付する書類
- ・専門家の利用について
- ○ 誰が申請できるの?
- ○ どんな土地でもいいの?
- ○ 費用はどれくらい?
- ・審査手数料
- ・負担金の額
- ○ その他の注意点
手続きの流れ
手続き全体の流れとしては図の通りとなりますが、まず初めに、管轄の法務局で事前相談をします。
この事前相談に、引き渡したい土地の状況等が分かる資料や写真を持参します。ここで十分な資料を提示できると、より精緻なアドバイスを受けることが出来るので、しっかり準備して臨みます。
ちなみに、兵庫県の管轄窓口は、神戸地方法務局の本局です。
<資料の具体例>
・登記事項証明書又は登記簿謄本
・法務局で取得した地図又は公図
・法務局で取得した地積測量図
・その他土地の測量図面
・土地の現況・全体が分かる画像又は写真
申請書の記載事項
申請書の記載事項は概ね以下の項目になりますが、法務省のホームページから申請書をダウンロードすることが出来ますし、記載例もありますので、申請書の作成自体はそんなに難しくないのではないでしょうか。
1.承認申請者の氏名又は名称及び住所(必須)
2.承認申請者又は法定代理人の電話番号その他の連絡先
3.承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積
4.承認申請に係る土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所
5.手数料の額
6.承認申請の年月日
7.承認申請書を提出する管轄法務局長の表示
申請書に添付する書類
以下は、全ての申請者にとって添付必須の書面です。まずはこれらの書類を用意して、事前相談に行くようにしましょう。
同業者の間で話をする限り、やはり準備の難しいのは、各種写真です。利用価値の低い土地というのは、やはり僻地や山中で現地に行くことが困難である場所が多いです。現地確認と写真撮影をいかに安全に行うかは悩ましいところであり、今後の課題です。
●承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
●承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
●承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
●申請者の印鑑証明書(市区町村作成)
⇒はパンフレットに載っている、山林の場合の写真例です。
無事に現地に到着できればいいのですが…
専門家の利用について
現状、国庫帰属手続の代理が認められるのは法定代理人等に限られ、専門家等への任意代理による申請は認められていません。
ただし申請書の作成だけは、弁護士、司法書士、行政書士が申請者本人に代わって作成代行することができます。
しかしこの手続きの最大のネックは写真撮影だと思っているのですが、写真を含む添付書類の作成は本人しかできないとなると、事実上、制度を利用できる者が限られてしまうのではないでしょうか。
誰が申請できるの?
申請者は、相続又は相続人に対する遺贈によって土地を取得した人です。
最新の土地の全部事項証明書を確認して、現在の所有者の中に、一人でも相続又は相続人に対する遺贈によって土地を取得した者がいる場合は、たとえ相続等以外の原因で土地を取得した方や法人が共有者としているとしても、申請することが出来ます。
ただし共有の土地を申請する場合は、共有者全員が申請者にならなければなりません。この点は注意が必要です。勝手に他者の持ち分を処分してはいけないということです。
なお令和5年4月27日以前に相続等によって取得した土地についても、本制度の対象となります。
※001376610.pdf(moj.go.jp)より抜粋。
どんな土地でもいいの?
この制度を使えば、どんな土地でも国が引き取ってくれるという訳ではありません。
以下のような土地は、引き取ることができないとされています。例えば、土地上に建物がある場合は解体後でないと申請できません。
ただ、下の1とか2とかは別として、一概には判断できない場合が多いので、まずは資料を揃えて事前相談することをお勧めします。
1. 建物がある土地
2. 担保権や使用収益権が設定されている土地
3. 他人の利用が予定されている土地
4. 土壌汚染されている土地
5. 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
6. 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
7. 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
8. 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
9. 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
10. その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
費用はどれくらい?
審査手数料
ながらく未定のままでしたが、ようやく審査手数料の額が決まりました。
審査手数料の金額は、原則、土地一筆当たり14,000円です。
※例外として、あとに説明する負担金について、隣接する二筆以上の土地を一筆の土地とみなして負担金を算定することが出来る場合があるのですが(相続土地国庫帰属法施行令第六条)、この場合は審査手数料も一筆の土地とすることが出来ます。
審査手数料は、手数料額に相当する額の収入印紙で納付します。手数料は、納付してしまえば例え不承認になっても返還されませんので注意が必要です。
負担金の額
相続土地国庫帰属制度は、土地の管理を国にしてもらうものなので、その管理費用の一部を国に支払うこととなっています。
したがって、土地所有権の国庫への帰属の承認を受けた場合は、土地の区分別に算定される額の負担金を納付しなければなりません。
負担金の額は、基本的には、どの区分でも原則20万円です。
申請する土地が以下の場合は、面積により負担金の額が変わります。
・宅地 ⇒ 市街化区域内、都計法第8条第1項1号の用途地域区域内
・農地 ⇒ 市街化区域内、農用地区域内、土地改良事業区域内
・森林
【表の出典】負担金の自動計算シート(エクセル形式)もこちらからダウンロードできます