BLOG ブログ

HOME // ブログ // ホントに廃止?経営業務の管理責任者

CATEGORY


建設業

ホントに廃止?経営業務の管理責任者

【この記事は2020年10月29日に書かれたものです】

建設業の許可要件こんにちは。

兵庫県高砂市の行政書士、石井です。

本年10月1日から、改正建設業法が施行されました。

改正までのプロセスでは、経営業務の管理責任者が廃止されるのではないかと、業界内では結構話題になっていましたが、いざ蓋を開けてみると、そんなことはありませんでした。

目次

「建設業に関し」過去5年以上の経験を求める規定を”廃止”

国交省 建設業法等改正について

上の画像は、国土交通省のホームページに掲載されている資料から抜粋しています。
「建設業経営に関し過去5年以上の経営者が役員にいることを必要とする規定を廃止」と書いてありますね。
これをみて、改正後は経営業務の管理責任者(以下、経管と略す)の要件が無くなると思った方は少なくないのではないでしょうか。
実際に、建設業者の方々と話をしていても、許可を取りやすくなったんでしょと聞かれます。
しかしそんなに甘くはありませんでした。

改正後は、建設業”法”からは消えたが、建設業法”施行規則”に規定されている

建設業法改正の概要

改正建設業法をみると、7条1号が非常にシンプルになっており、詳細は国土交通省令で定めるとされています。
結局どうなったんだと施行規則を確認してみると…

(法第七条第一号の基準)
第七条 法第七条第一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 次のいずれかに該当するものであること。
イ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること
(1) 建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
以下略

ちょっと違うけどほとんど一緒の規定があるやん。

すこしガッカリですね。
つまり、建設省告示第351号を1年短縮して5年にしたことで旧法7条1号イが不要になったということですかね。
この意味で旧法の規定は”廃止”で正しいんだろうな。

改正後は、経管の要件は5パターンある。

新しい経管の要件は、建設業法施行規則第7条に規定されていますが、そのパターンは以下の5つです。

①常勤役員等として建設業で五年以上の経営経験
②常勤役員等として建設業で五年以上、準ずる地位で経営経験(権限の委任を受けた者のみ)
③常勤役員等として建設業で六年以上、準ずる地位で補佐経験
④規則7条1号ロ(1)該当者、かつ、直接に補佐する者
⑤規則7条1号ロ(2)該当者、かつ、直接に補佐する者

以下、それぞれ見ていきましょう。

規則7条1号イ(1)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

改正前の建設業法に規定されていたものから、「許可を受けようとする」との文言が無くなっています。
つまり、建設業であればどの業種でもいいことになりました。
改正前は、許可を受けようとする業種以外の業種での経営経験は6年必要でしたので、1年短縮されました。

規則7条1号イ(2)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者

権限の委譲に関して、旧法下では、経営業務の執行に関して取締役会等から具体的な権限委譲を受けた場合とされており、法人を前提とする規定でした。
改正後は、単に「経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る」とありますが、個人事業主を含む趣旨ではないようです。この点、個人事業主の場合、当該個人に着目して許可が下りるので、まったく違う人格にすべてを任せる権限の委任という考えに合致しないため、個人事業主を含まないことは当然といえば当然ですね。

なお、兵庫県建設業室が出している申請に関する確認資料のお知らせをみると、規則7条第1号イ(2)に該当するのは、会社の執行役員を想定しています。

規則7条1号イ(3)建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

これも兵庫県の確認資料のお知らせを見てみると、次の者が想定されています。

本店部長、支店次長、営業所次長、事業主の配偶者・子等

旧法下でも、補佐経験の経験期間は6年でしたので、そこは変わっていません。
本店部長や支店次長などで、事実上のナンバー2や、執行権限の委任があったことを証明できない場合は、この規定に当てはまりそうですね。
「準ずる」や「補佐」の事実証明が難しそうですが。

規則7条1号ロについて

規則7条1号ロについて

上の図を見てください。まず注目したいのは、常勤役員+直接補佐者という構図です。
経管の要件をだれか一人で担うのではなく、グループで満たせばよいということです。
その点で、多少は要件が緩和されたといえます。

しかし、常勤役員がAかBのいずれの場合にも、「常勤役員を直接に補佐する者」の設置が必須です。
この常勤役員を直接に補佐する者は、常勤でなければなりません。
また、経験年数は、申請しようとする会社等で5年以上必要です。
結構厳しい要件に思えますね。
ただし、財務、労務、運営のうちの複数個を一人が兼ねてもよいとのことです。

規則7条1号ロ(1)と(2)の違い

ハテナ

常勤役員の要件として、規則7条1号ロでは(1)と(2)が挙げられています。この(1)と(2)の違いは次の通りです。

(1):建設業の役員等又は次ぐ職制上の地位で5年以上の経験(ただし役員として最低2年以上)
(2):業界に関係なく役員として5年以上(建設業の役員として最低2年以上)

違いは、(1)は建設業者として5年以上の経験が必要なのに対し、(2)は建設業者としての経験は最低2年で足りるという点です。

紛らわしいのは、(1)の「五年以上役員等(中略)としての経験を有する者」という部分です。これは、役員であるか次ぐ職制上の地位でるかに関わらず、建設業者の経験として5年以上の経験が必要という意味です。
つまり、建設業者としての5年の経験を100%とした場合、その割振りとして、最低40%は役員としての経験が必要で、残りの60%は役員でも次ぐ地位でもいいよということです。

まとめ

今回の経管要件の改正では、許可を受けようとする業種での経験は不要になった点では、緩和されたといえます。
新しく施行規則に規定された要件は、今後の実務での事例の積み重ねによるところが大きいですが、従業員が5人以下であるような小規模な会社では、社内での権限の細かい分掌はないでしょうから、使う機会は少ないのではないでしょうか。

ただ、今回の建設業法の改正では、事業承継や相続の規定も追加されており、それらとの兼合いも含めて、さらに追及していきたいと思います。

SHARE
シェアする

ブログ一覧