【遺言】遺言書保管制度、実際に手続きしてみました。
こんにちは。
兵庫県高砂市の行政書士、石井です。
本年7月10日からスタートした遺言書保管制度。
自筆証書遺言を法務局で保管してくれるサービスです。
相談の数も増えており、自分自身も気になったので、遺言書を書いて保管の申請をしてみました。
やってみて気づいたこともありましたので、ご紹介します。
是非参考にしてください!
目次
- ○ そもそも自筆証書遺言保管制度ってなに?
- ○ 遺言書を預ける場合の手続きの流れ
- ○ ①遺言書を書く
- ・使用するペンについて
- ・使用する用紙について
- ・遺言執行者は決めておく方がいい。
- ○ ②申請書を作成する
- ○ ③申請の予約をする
- ○ ④法務局に書類を提出する。
- ○ ⑤手数料を支払って保管証を受け取る。
- ・遺言書の保管を家族等に伝える場合は、保管証のコピーを渡す。
そもそも自筆証書遺言保管制度ってなに?
まず、自筆証書遺言とは、全文を自筆で書く遺言書のことです(民法第968条)。
この自筆証書遺言は、自分一人で作成できるため、だれでも気軽に取り掛かることができます。
しかし、この遺言には、秘密にしすぎてだれにも発見されなかったり、保管場所を知らせていたために破棄や改ざんされるといったデメリットがあります。
このデメリットを無くし、自筆証書遺言をしやすくするために、法務局での遺言書保管制度が始まりました。
法務省:法務局における自筆証書遺言保管制度について 制度概要
遺言書を預ける場合の手続きの流れ
保管申請は、次の手順で進めます。
①遺言書を書く
②申請書を書く
③申請の予約をする
④書類を提出する
⑤証明書を受け取る
手続き自体はそんなに難しいものではありませんね。
法務省:法務局における自筆証書遺言保管制度について 遺言者の手続
①遺言書を書く
自筆証書遺言作成のポイントは、基本的には以下の3つです。
・日付、名前を書く。
・日付、名前を含む、全文を自書(財産目録除く)。
・押印する。
自分で遺言を保管する場合は上記を守れば問題ないのですが、保管申請に関しての注意点があります。
使用するペンについて
法律上は、筆記用具に関する制限はありません。
ですので、鉛筆やフリクションボールペンであっても、法定の形式さえ整っていれば、遺言書としては有効です。
今回申請するにあたり、私は鉛筆書きで遺言書を作成してみました。
結果は、法務局の担当官から、ペンで上書きするように指示されました。
理由は、鉛筆だと消えるからだそうです。確かに、長期保管中に何らかの理由で消えてしまって、あとから相続人らに言い寄られても困るでしょうから、もっともといえばもっともですね。
使用する用紙について
使用する用紙について、紙質に制限はないのですが、以下のとおり法務省令で規定されています。
1 用紙は、文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙とする。
2 縦置き又は横置きかを問わず、縦書き又は横書きかを問わない。
3 各ページにページ番号を記載すること。
4 片面のみに記載すること。
5 数枚にわたるときであっても、とじ合わせないこと。
6 様式中の破線は、必要な余白を示すものであり、記載することを要しない。
なお、この様式に従っていない遺言書での申請は、却下となります(法務局における遺言書の保管等に関する政令2条2号)。
遺言執行者は決めておく方がいい。
遺言執行者とは、遺言の内容の実現に必要な手続きなどを行う人をいいます。
もし自筆証書遺言保管制度の利用を考えているのであれば、遺言の中に、遺言執行者を指定する旨を記載しておくとよいかと思います。
というのも、保管の申請書の中に、【死亡時の通知の対象者欄】というものがあります。
これは、遺言者の死後、遺言書保管官が指定された者に対して、遺言書が保管されている旨を通知してくれるというものです(関係遺言書保管通知とは異なります)。
スムーズに相続手続きを開始するためには、被通知者を遺言執行者にするのがベストかと思います。
②申請書を作成する
申請書の作成の前に、住民票(筆頭者、本籍記載のもの)を取っておいてください。
申請書に記載するために必要ですし、申請時の添付書類でもあります。
申請書をダウンロードして印刷する場合には、Adobe Acrobat Readerで開く必要があるようです。
用紙は法務局の窓口でももらえるそうですが、手書きの場合は申請書の読み込みに時間がかかったり読み取り誤りが起こるおそれがあるので、できればパソコンで入力しましょう。
③申請の予約をする
保管を申請できる場所は、以下の3つのうちのいずれかを管轄する遺言保管所(法務局)です。
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地
現在、保管の申請は完全予約制です。保管の撤回や遺言書の閲覧も同様です。
私は電話で予約しましたが、予約専用のホームページもあります。ホームページは24時間365日、いつでも利用可能とのことです!便利ですね。
④法務局に書類を提出する。
私が提出した書類は、遺言書、申請書、住民票でした。
受付で本人確認を行うので、運転免許証などの身分証を忘れずに持参してください。
書類を提出したら、書類の確認等が終わるまで待ちます。
待機時間は、スムーズにいって、だいたい50分ぐらいです。結構長いです。手続きに慣れるまでは仕方がないですね。
申請書に記載ミスなどがある場合は、その場で訂正します。
⑤手数料を支払って保管証を受け取る。
申請書に問題がなければ、手数料を支払います。
申請書に手数料分の印紙貼付欄がありますが、印紙の購入は、窓口で書類のチェックをしてもらってからにしましょう。
手数料は遺言書1通につき3900円です。公正証書遺言の手数料に比べれば、かなり安いです。
手数料を支払ったら、保管証を受け取って、申請手続きは終了です。
遺言書の保管を家族等に伝える場合は、保管証のコピーを渡す。
保管証は再発行してもらえないので、大事に管理しましょう。
遺言書の保管申請をしたことを、家族等に伝えるべきかどうかは、各家庭それぞれかと思います。
ただ、保管されている遺言書の閲覧は、遺言者が生きている間は遺言者しかできませんので、家族等に伝えたからといって、遺言の中身を知られることはありません。
死亡時の通知を設定している場合は、死亡後、指定された者に遺言書保管の事実が通知されるので、遺言書を発見してもらえないリスクはさらに減ると思います。